水晶体の奥に位置する部分を硝子体腔と呼び、そこに満たされているゼリー状の透明な液体を硝子体といいます。硝子体はさまざまな疾患によって濁りや出血が生じることがあり、場合によっては硝子体が網膜を引っ張り、さまざまな目の障害を引き起こすことがあります。
硝子体手術は、硝子体腔や網膜に発生した疾患を治療するために行われる手術です。この手術では、白目に小さなトロカールを4ヶ所設置し、そこから特殊な細い器具を挿入して、濁りや出血を含む硝子体を除去し、網膜の穴をふさいだり、網膜の異常な膜を取り除いたり、剥がれた網膜を元に戻すなどして、網膜機能の回復を目指します。
硝子体とは、眼球の大部分を占める透明なゼリー状の組織です。通常、血液を含まない硝子体に、網膜などの血管から出血が起こると、血液が溜まって視界が遮られ、見えづらくなります。この状態が「硝子体出血」です。軽度の出血であれば自然に吸収されることもありますが、出血量が多い場合は、手術で血液を除去しなければ視力が回復しません。必要に応じて早期の治療が重要です。
糖尿病網膜症、網膜剥離、加齢による硝子体剥離、網膜静脈閉塞症、動脈瘤の破裂などが原因となります。
出血が少ない場合には「飛蚊症」と呼ばれる症状が現れ、黒い小さな点や虫のような影が視界に見えることがあります。出血が多くなると、視界が墨を一気に流したかのように暗くなります。さらに進行すると、視界全体が霧がかったようにぼやけ、視力が大幅に低下します。
「黄斑」とは、網膜の中心に位置し、多くの視細胞が集中している非常に重要な部位です。この黄斑に穴が開いてしまう病気が「黄斑円孔」です。網膜の中心で起こるため、周囲は見えているのに、中心だけが歪んで見えたり、黒く欠けたように感じることがあります。自然に治ることは非常に稀で、放置すると時間が経つにつれ視力が回復しにくくなってしまいます。早期の診断と手術治療が視力回復に重要です。
加齢による硝子体の変化、外傷、その他の疾患によっても発生する場合があります。
視力低下、中心部分の歪み、中心部分の暗点などがあり早期発見と手術治療が重要です。
当院では、最新の25Gおよび27Gの硝子体手術機器を導入しており、より精密な硝子体手術を行っています。小さな切開で済むため、手術時間の短縮や侵襲の軽減が図れ、術後の回復も早期に良好な状態を得られるようになりました。
黄斑上膜の原因は、主に加齢によるものです。40歳を過ぎる頃から、硝子体の質が変化し、硝子体が網膜から徐々に剥がれていきますが、この際に一部の硝子体が黄斑に残ることがあり、それが黄斑上膜を形成します。また、網膜に裂孔(亀裂や穴)が生じる「網膜裂孔」や、目の中に炎症が起こる「ぶどう膜炎」なども、黄斑上膜の原因となることがあります。
黄斑上膜ができても、初期には自覚症状がないことが多いです。しかし、膜が徐々に厚くなり、網膜にシワができてくると、視力の低下や、物が歪んで見えるなどの症状が現れることがあります。
緊急性はありませんが、その他の疾患との鑑別が必要です。歪みの程度に応じて硝子体手術を行う場合があります。
「網膜」とは、光を受け取り、それを脳に伝える役割を持つ重要な組織で、眼球の内側奥に広がる薄い膜です。カメラのフィルムに例えられる網膜は、光を感じる「神経網膜」と、それを支える「網膜色素上皮」という二つの層から成り立っています。網膜剥離とは、神経網膜がこの網膜色素上皮から剥がれてしまう状態を指します。
加齢や外傷などが原因で、網膜に裂け目(網膜裂孔)などができ、その下に水が入り込んで、網膜が壁から剥がれてしまうことが「網膜剥離」です。
網膜が剥がれても痛みは感じないため、気付きにくい病気です。初期の症状として目の前にゴミが見える、黒いものが飛んで見える「飛蚊症」や、光がちらつくような「光視症」を感じることがあります。これらの症状がある場合、飛蚊症や光視症の原因が網膜裂孔や網膜剥離ではないことを、診察・検査によって確認することが重要です。ただし飛蚊症や光視症は問題がない場合もあります。
症状だけでは分からないため、まずは診察・検査をお願いします。
網膜剥離の範囲が拡がってくると徐々に視野が欠ける、見えない範囲が拡がってきます。網膜剥離は手術により網膜を元に戻す(網膜を復位させる)必要があります。
網膜剥離の場合は、大学病院などの高次医療機関へ紹介いたします。
糖尿病網膜症は、糖尿病の慢性合併症の一つであり、網膜微小血管症と神経障害を特徴とする疾患です。高血糖状態が持続することで、網膜血管の透過性亢進、微小動脈瘤形成、出血、硬性白斑形成などが生じ、最終的には新生血管形成を伴い、黄斑浮腫や硝子体出血により視力障害をきたします。
糖尿病になると、血液の中の糖が血管を傷つけてしまうことがあります。特に目の奥にあるとても細い血管は、この糖の影響を受けやすく、傷ついてしまいます。傷ついた血管は、栄養をうまく運べなくなり、新しい血管ができてしまいます。この新しい血管はとてももろく、出血しやすいため、出血することにより視界がぼやけるなどの症状が出てくることがあります。
初期には自覚症状がないことが多いのですが、目の中を詳しく調べると、少しずつ変化が見られます。病気 が進むと、視界がぼやける、物が二重に見えるなど、視力に変化が現れることがあります。さらに悪化すると、視界に黒い影が見えたり、光がちらついて見えたりすることもあります。放置すると、失明してしまうこともあるので、早期発見・早期治療、定期的な経過観察が大切です。
黄斑円孔、黄斑上膜(網膜前膜)、裂孔原性網膜剥離、網膜静脈閉塞症による硝子体出血、糖尿病網膜症による硝子体出血などの疾患も硝子体手術の適応となります。必要に応じて高次医療機関に紹介します。
当院では、最新の手術設備を揃えています。
院内には最新の25Gおよび27Gの硝子体手術機器を導入しており、より精密な硝子体手術を行っています。小さな切開で済むため、手術時間の短縮や侵襲の軽減が図れ、術後の回復も早期に良好な状態を得られるようになりました。
当院では、大学病院並みの機器を揃えており、コンステレーションもそのうちの一つです。コンステレーションは、白内障手術と硝子体手術を同時に行える眼科手術装置です。さらに、広角眼底観察システム(Resight®)を手術顕微鏡に取り付けることで、眼底全体を詳細に観察しながら安全かつ正確に手術を進めることが可能となりました。